教授挨拶

松井茂之教授

平成25年4月より名古屋大学大学院医学系研究科に生物統計学分野が開講し、その教授職を拝命いたしました。ここに慎んでご挨拶申し上げます。

生物統計学(Biostatistics)の起源は、17世紀英国での生命表解析以前まで遡り、その理論・方法論の礎(いしずえ)は20世紀前半に築かれました。20世紀後半には、医学研究(特に、臨床研究)での適用が本格化し、それに伴ってより医学研究に特化した方法論の体系化がなされ、現在では、医学研究の推進に欠かせない専門分野の一つとして確立するに至っています。しかしながら、これまでの生物統計学の発展は、主に欧米においてもたらされたものです。

翻って日本国内における生物統計の研究・教育の体制は、近年の臨床研究の興隆もあって、徐々に整備が試みられつつありますが、依然として、欧米に比べて大きく立ち後れているのが現状です。生物統計家の不足はいまだ深刻なレベルから脱していません。日本発の生物統計の研究も非常に限られています。日本の生物統計はいまなお発展途上といえるでしょう。とりわけ、生物統計家の不足は、医学・臨床研究の推進、さらには、先端医療開発の国際競争において、今後大きな“disadvantage”となり得えることから、その解決は急務といえます。

名古屋大学医学系研究科では、平成25年度に向けて「医薬統合」の理念のもと、研究科全体の改組が行われました。基礎研究から前臨床、治験、市販後調査と医薬品の適正使用に至る創薬の「出口」を担う人材育成に向けて、先端医療・臨床研究支援センター、化学療法部、薬剤部、各診療科を含む名大附属病院が全面的にバックアップする体制も整備されました。生物統計学教室はこの改組の中で新たに設置されたのです。

わたくしは、この「医薬統合」の理念の中核の一つとして、生物統計学が位置づけられていることに強く感銘を受けました。同時に、日本の生物統計学の将来を変え得る大きなポテンシャルを直感しました。

生物統計の実践面では、医学系研究科・附属病院内での多くの共同研究と充実した実地教育の場が用意されています。生物統計の研究・教育面では、我が国唯一の統計科学の研究機関である統計数理研究所との大学院連携講座「統計数理学」も時期を同じくして医学系研究科内に設置されました。これより、生物統計学の数理基盤に関する充実した講義コースの開講なども可能となりました。

こうして、名大生物統計学教室は、生物統計学の実践・研究の双方において国内トップクラスの体制としてスタートを切ることができました。この場を借りて、多大なご支援を賜りました名古屋大学・統計数理研究所の諸先生方に厚く御礼申し上げます。

このような強力な体制のもと、医学への貢献、生物統計研究の振興、そして、次代の生物統計家の育成に向けて全力で邁進いたします。

皆様方の引き続きのますますのご指導・ご鞭撻、ならびに、ご支援をお願い申し上げます。

                      2013年4月
名古屋大学大学院医学系研究科
臨床医薬学講座 生物統計学分野

教 授  松 井 茂 之

 

略歴:
1993年3月 東京理科大学工学研究科経営工学専攻修士課程修了
1993年4月 ローヌ・プーランローラー株式会社 研究開発本部統計解析室
1998年3月 東京理科大学工学研究科経営工学専攻博士後期課程満期退学
1998年4月 大分県立看護科学大学看護学部人間科学講座健康情報科学 助手
2001年4月 同 講師
2002年5月 京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻薬剤疫学分野 助教授
2008年7月 情報・システム研究機構 統計数理研究所データ科学研究系 准教授
2009年10月 同 教授
2013年4月 名古屋大学大学院医学系研究科 臨床医薬学講座 生物統計学分野 教授